認められる範囲に注意!
損害賠償の対象となる治療費とは?
治療費はもちろん加害者に請求できますが、その範囲に注意する必要があります。
被害者なりの考えであれもこれも治療費に組み込もうとしても通らないのです。
第一に、交通事故に遭って生じた傷害を治すために必要な治療費に限られます。
事故前からあった持病やケガの治療費も含めようとしても、それは無理なのです。
第二に、過剰、または贅沢な治療は賠償の対象外です。
例えば、ケガの程度に照らして普通は医師が必要と判断しないほどの徹底した検査をしたとします。
後遺症が心配なのはわかりますが、そこまでやっては相手は払ってくれません。
やるなら自腹覚悟となります。
あるいは個室を必要としない程度のケガで、自分の判断で個室を使用し、ワンランク上の食事を摂った場合。
これも保険金が出るのは相部屋で普通の食事を摂った場合に必要な費用だけです。
第三に、保険金が出るのは西洋医学の治療だけです。
整体、鍼灸、カイロプラクティックなどはまず出ないと思ってください。
実際には西洋医学は万能ではなく、整体や鍼灸で楽になることがあるのはわかります。
しかし、法はそういうものを正統な治療法とは認めていないのです。
症状固定後の治療費は範囲外
治療を続けていくと全快するか、もしくはそれ以上治療を続けてもよくならない限界に達します。
後者を「症状固定」と呼びます。
症状固定の段階で残っている障害が「後遺障害」です。
症状固定に達した後の治療費は保険金が下りないことに注意してください。
症状固定に達したら、それ以上よくならないが、悪くもならないので治療は不要、というのが法のとらえ方なのです。
症状固定後の後遺障害については、治療費ではなく、傷害慰謝料と逸失利益で償うというのが法の考え方です。
だから症状固定が近づいたら、意固地に治療を続けようとしてもムダです。
それよりできるだけ高い後遺障害等級の認定を受けることに力点をシフトしないといけないのです。
症状固定後は本当に治療は不要?
「症状固定に達したら治療は不要」というのは、実際には必ずしも正しくないと思います。
治療を続けないと症状が悪化するような後遺症もあると思います。
ある弁護士の本を読んでいたら、それが裁判で認められて、症状固定後の治療費も出た判例が出ていました。
しかし、これはかなりのレアケースなので、期待はしない方がいいです。